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ワクチンで作られた抗体検査

ワクチンと抗体測定

当院では、ワクチンを接種して作られた抗体の存在を検査することができます(税込10500円)。これは、S抗体と言って、スパイクに対する抗体(Spike抗体)です。この検査は、新型コロナウィルスにかかったか否かを知る抗体検査ではありません。抗Spike抗体と中和抗体価は高い相関性を有していますので、この抗体の存在により中和抗体の存在を知ることができます。そしてワクチンにより作られた抗体は、下記の通り、変異株に対しても効果が期待できるものです。

新型コロナワクチンの効果について

いま国内で接種が行われている米ファイザー社と独ビオンテック社のワクチン「コミナティ」は、新型コロナウイルスの発症を防ぐ効果が95%あると報告されています。

これは、海外で実施された臨床試験(治験)の結果です。実際に接種が進むイスラエルでは、ほぼ同程度の効果が報告されました。

承認申請中の英アストラゼネカ社のワクチンは、海外で行われた臨床試験では平均70%の効果でした。日本では武田薬品工業が承認申請している、米モデルナ社のワクチンは、発症予防効果が94.1%でした。

実際のファイザー社の臨床試験では、ワクチンを打たなかった人18325人のうち162人(0.88%)が発症したのに対し、ワクチンを打った18198人のうち発症したのは8人(0.04%)でした。これに、それぞれの人の接種後の観察期間を考慮し、効果を計算しています。この効果は、65歳以上の対象者でも同様で、高齢者でもワクチンの効果があることを物語っています。

ワクチンで作られる抗体

RNAワクチンは、ウィルスの周囲にあるエンベロープのスパイクに対する抗体(Spike抗体)を作るように設計されています。ワクチンを2回接種して1週間以上経過した頃にこのスパイクに対する抗体が作られることがわかっています。当クリニックでは、このスパイクに対する抗体を測定することができます。

新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)の変異株が流行っています。多くの変異は感染力や病原性に影響を与えることはありませんが、今日本で流行りつつある変異株は、感染力が強く、重症化率も高いという性質があるみたいです。

スパイクの遺伝子に変異が起きると感染性や中和抗体の効果に影響を与えるのではないかと懸念されています。しかし、今日本で流行している変異株に対して、ワクチンで作られる抗体が効果を有するということが示されました(下記参照)。

新型コロナワクチンは新型コロナウイルスの変異株にも効果あり

一般論として、ウイルスは絶えず変異を起こしていくもので、小さな変異でワクチンの効果がなくなるというわけではありません。また、米ファイザーのワクチンでは、新型コロナウイルスの変異株にも作用する抗体が作られた、といった実験結果も発表されています。ただし、一部の新型コロナウイルスの変異株についてはワクチンの効き目が低下することを示唆する報告もあり、データの蓄積やワクチンの改良が進められています。

B.1.1.7変異体(イギリス)による感染に対するワクチンの推定有効性は、2回目の投与後14日以上で89.5%(95%信頼区間[CI]85.992.3)。 B.1.351(南アフリカ)変異体による感染に対する有効性は75.0%(95CI70.578.9)でした。感染による重症、重篤、または致命的な疾患に対するワクチン有効性は非常に高く(97.4%(95CI 92.299.5%)ことも報告されています(NEJM May 10)。

承認申請がなされた新型コロナワクチンの審査にあたっては、変異株に関する情報も含め、引き続き様々な情報を収集しつつ、適切に有効性、安全性などを確認していくことになります。

変異株への効果、株やワクチンの種類で差がある

変異の種類や、ワクチンの種類によっては、効果が下がる場合もあります。

世界保健機関(WHO)が、「懸念される変異ウイルス」として挙げているのは、英国で最初に見つかった変異ウイルス(英国株)や、南アフリカで最初に報告された変異ウイルス(南ア株)、ブラジルや日本で報告された変異ウイルス(ブラジル株)です。

CDCは、ワクチンを接種した人の血液を使って変異株への効果を調べる実験の結果などから、ワクチンの効果の低減は、南ア株がもっとも大きく、次いでブラジル株で、英国株はワクチンへの影響は一番小さいだろうとしています。

 この影響は、ワクチンの種類によっても異なります。CDCWHOによると、米ファイザー社や、日本では承認申請中の米モデルナ社のmRNAワクチンは、英国株に対しても、南アフリカ株でも、あまり効果が落ちませんでした。アストラゼネカ社のワクチンは、南アフリカ株に対し、効果が落ちるという結果でした。

アストラゼネカ社が南アフリカで実施した小規模な臨床試験では、軽症~中等症の症状を防ぐ効果は約10%にとどまっていました。ただし、WHOは、重症化を防ぐ効果が落ちたかどうかはまだ不明として、南アフリカ株の流行している地域でも、アストラゼネカ社製のワクチンの接種を推奨するとしています。

ワクチンメーカーはすでに、変異株に対してより効果の高いワクチンの開発を始めているそうです。

変異株に対するファイザーのワクチンの効果

511日に、横浜市立大学の 山中竹春 教授、梁 明秀 教授、 宮川 敬 准教授、加藤 英明 部長らの研究チームは、ワクチンの効果について次のように発表しました。

日本で接種が行われている、ファイザーのワクチンは、従来株のほか、様々な変異株に対しても中和抗体の産生を誘導し、液性免疫の観点から効果が期待できるそうです。

その内容の要旨は以下の通りです。

1.     日本人のワクチン接種者111名(未感染105名、既感染6名)を対象に、ファイザー製ワクチンの有効性について、中和抗体(液性免疫)の保有率という観点から調査。

2.     独自の迅速抗体測定システム「hiVNT新型コロナ変異株パネル」を活用して、従来株および変異株7種の計8株に対する中和抗体を測定。

3.     未感染者でワクチン2回接種した人のうち、99%の人が従来株に対して中和抗体を保有していた。流行中のN501Y変異を有する3つのウイルス株(英国、南アフリカ、ブラジルで初めて確認された株)に対しても、9094%の人が中和抗体を有していた。

4.     懸念されているインド由来の株に対しても中和抗体陽性率が低下するような傾向は見られなかった。

5.     8株すべてに中和抗体陽性であった人は全体の約9割(93/105; 89%)であった。

6.     中和抗体の上がり方については個人差が見られた。特に1回接種のみでは、変異株に対して中和抗体が産生されない人が一定数存在した。

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